リスクビジネス代表「保険」の未来予想図

リスクビジネス代表「保険」の未来予想図
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結局のところ、保険とはリスクのビジネスである。

マーケットとしては大きく、また付加価値をつける対象として最も効果的なものは、目に見えない物である。

情報商材やノウハウ、コミュニティ参加の権利、そして保険

新規参入するには非常に興味深いマーケットである。

しかしその実情はあまり理解されていない。

少し考えてみた。

スタートアップの困難性

保険業は始めるのがとてつもなく難しい。というのも、規制機関が保険市場に新規プレイヤーをを参入させたがらないからである。

一番の理由はリスクで、保険業にはリスクを管理するための強固なシステムとバランスシートが必須アイテムである。

保険はリスクのビジネスであり、自分たちがケガをしないよう綿密なリサーチをかけるため、保険商品の開発には数年かかることもある。

しかし、現在収集できるデータの量や種類は昔に比べて豊富で、かつリアルタイムで入手することができる。

つまり長い商品開発の期間は、莫大な情報の処理さえ出来てしまえば、スタートアップにとってはチャンスとなり得る。

日本の生命保険業界の市場規模は、約40兆円(年間の生命保険料ベース)となっており、米国に次いで世界第2位の規模の市場です。
最新の調査では、生命保険の「世帯加入率」は90.5%で、実に10世帯のうち9世帯が何らかの生命保険商品に加入しているという「保険大国」なのです。
*社団法人生命保険協会HPより引用*

また、国内で営業展開する生命保険会社の数は42社で、そのうち外資系生保が16社、損害保険グループ傘下の生命保険会社の子会社が4社、インターネット専業が2社となっています。

マーケットとしては非常に巨大である。

業界に参入するには?

時代への適合

保険業界への参入の鍵は、行動経済学を理解することにある。行動経済学とは、人間の行動そのものや、それが購買活動にどのような影響を与えているかを研究する学問だ。

まず、一般的に保険は負の支出だと考えられている。

契約者が保険料の対価を得るということは、何か悪いことが起きたことを意味する一方、保険料を支払いっぱなしだと損をした気分になり、負けっぱなしな気がする。

保険にテクノロジーをどのように使えば市場で稼ぐことができるのだろうか?

保険テクノロジーの分野で大きな成功をおさめるには、いちから新しい商品を開発するのではなく、うまくいっている部分はそのままにして、既存の商品を今の時代にあった形に変化させていくということが重要である。

具体的には、分かりやすい契約書を準備し、インセンティブ(顧客にある行動を促す要因)を時代の流れに合わせていくことなどが考えられる。

そのため契約書を作る際には、補償内容をシンプルにして、その保険商品を購入することで、加入者にはどんな利点があるのかをハッキリさせなければいけない。

保険は複雑で分かりにくいというイメージを持つ人は多い。

分かりやすく補償内容がハッキリと書いてある契約書をつくるだけでも、契約者の購買意欲は上昇するだろう。

そのためには、簡潔な言葉で何がカバーされていて何がカバーされていないのかを明記し、例外をなくしつつ、現状に合わせた微調整を行わなければいけない。

住宅保険であれば、Airbnb等の民泊を考慮したり、自動車保険なら、まだ日本は東京の方でしか対応はしていないがUberのような一時的な白タクにも焦点を当てる必要が出てくるだろう。

保険会社は保険内容に余裕をつくって、加入者が何か新しいことに手をだすのを許容しなければいけない。

さらに契約書の内容はわかりやすく、そして実際に起こり得るような出来事をカバーしてるかどうか。

このようなポイントを抑えれば、消費者の間でその保険会社の評判が高まることになるだろう。

正確かつ大量のデータ収集

同時に、できる限り多くのデータを集めるられるように、ユーザーに刺激を与えることも重要だ。

スマホを使うことで、データの収集経路を増やすことができる。さらに集めたデータを利用することで、リアルタイムで顧客の行動を解析でき、動機や刺激の種類の変更や調整も可能となる。早い時点からデータ収集のために顧客候補に協力させることができれば、最終的には統計的な顧客の要望行動に則った契約という形でWin-Winを築くことができるようになる。

必要なときに保険を請求できるかどうかというのが、保険商品の品質の要だ。しかし保険は、自動車のこすり傷や、ただ咳が出ているだけのときなど、全ての状況をカバーするためには設計されていない。もともと保険は大きな出費が起きたときのためのものだ。

保険金の請求プロセスは、請求額の大小に関わらず全ての案件で同じであるため、少額の問題については加入者が自分で手数料をかけずに処理し、被害額が大きいときには保険を利用するように仕向けることで、保険会社は出費をかなり抑えることができる。そして減らした出費を顧客に還元すれば良い。

保険業界で成功するためには、分かりやすい契約書や簡素化された契約プロセス、使いやすいサービスを準備し、加入者が出費を抑えつつ、本当に必要なときにだけ保険を請求するように契約者自身の動機付けを調整することが重要になってくると思われる。

P.S.

今年10月に日本銀行の国債保有残高が400兆円を突破した。これは、日本の国債総発行残高の4割近くである。

これはマイナス金利の影響で民間銀行が10年物国債を満期前に日銀に転売していることも大きな影響ではあるが、

これにより何が想定されるかというと、預金封鎖である。

実際に終戦直後には行われたのだが、

預金封鎖を簡単に言うと銀行に強制的に預金させた後に、旧日本銀行券の取り扱いをやめて新札を発行するということである。

すぐにこれが行われる可能性はそう高くはないが、政府のツケを国民で払う可能性があるということは頭に入れておく必要がある。

自国通貨への信頼度が低下すれば、有限であるGOLDや、ビットコイン等の暗号通貨のニーズは否応無しに高まると思われる。

入ってる保険会社が債務超過して受け取り予定額を貰えなかったらその分をビットコインで数%増しで補填するっていうビットコイン建ての保険のようなものでも、リスクビジネスとしては面白いかもしれない。

いや、預金封鎖したら保護機構とか関係なしで保険業界だけじゃなく日本経済自体が止まるか。